COLUMN

コラム

風薫る5月、新緑が目に鮮やかな季節ですね。

最近、私は未来の放送人材・アナウンサーを目指す若い世代の研修に携わらせていただきました。その最終日、あるドラマチックな出来事がありました。

本番を想定した実践プログラムの中、緊張から決定的な間違いをしてしまった新人さんがいたのです。
誰もが一瞬、心が折れてしまったのではないかと心配したのですが……なんと新人さんは、別の部屋にこもり、一人で猛練習を繰り返していました。

立ち止まるのではなく、超高速で自己修正して次へ備える。そのピュアで貪欲なレジリエンス(回復力)に、私は胸が熱くなりました。

さらにその方は、「先生の実際の現場を、もっと近くで見せてください」と真っ直ぐな目で志願してきたのです。

本来、一瞬の油断も許されないプロの本番現場に、未経験の若い世代を同行させるのは大きなリスクを伴います。ですが、でも私は「今、学びたい」という熱量の最高点を逃したくありませんでした。

「うん、いいよ」

そう笑顔でお返事をしたその夜。私自身、夢の中で「もしトラブルが起きたらどうカバーするか」というシミュレーションを何度も繰り返してしまうほど、脳内は大忙しだったのですが(笑)、不思議と身が引き締まるような、心地よい緊張感に包まれていました。
リスクを承知で打席の近くへ引き上げる。それこそが、先輩としての覚悟だと教えられた気がします。

帰り際、その新人さんが私のもとに駆け寄ってきて、こう言ってくれました。
「私が一番弱っていた時に、奈良さんが励ましてくれたこと、一生忘れません」

形式的なマナーを超えて、本気で向き合った大人に対して、これほど純度の高いストレートな感謝を返してくれる。今の若い世代は、心の通わせ方が本当に豊かなのです。

育てる」とは、こちらが一方的に教えることではありません。
こちらが打算なく注いだエネルギーが、巡り巡って美しい循環(おかげ様の通り道)となり、気づけば自分自身が一番大きな感動というギフトを受け取っている。

次世代の眩しい背中を見ながら、私自身もさらに視座を高く、美しく、言葉の力を磨き続けようと心に誓った、忘れられない1日となりました。

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