『話そうと思っていたことが飛ぶとき』
『話そうと思っていたことが飛ぶとき』
話すつもりだったことが、ふと頭から抜け落ちてしまう瞬間があります。誰かと会話しているとき、プレゼンの途中、あるいはカメラの前で話し始めたその瞬間に――「あれ、何を言おうとしていたんだっけ?」と、言葉が宙に舞ってしまうのです。
これは、決して珍しいことではありません。実は、プロのアナウンサーでも同じような経験をすることがあります。生放送の現場では、予期せぬトラブルや急な話題変更が日常茶飯事です。そんなとき、どうやってその“空白”を乗り越えているのでしょうか。
まず大切なのは、「焦らないこと」です。一瞬の沈黙は、聞き手にとって必ずしも不安を与えるものではありません。むしろ、落ち着いた間(ま)として受け取られることもあります。アナウンサーはその間を活かし、表情や声のトーンで安心感を与えながら、次の言葉を探します。
また、話の柱となるキーワードを頭に入れておくことも重要です。すべてを暗記するのではなく、話の流れを構成する“骨組み”だけを覚えておくことで、言葉が飛んでもすぐに軌道修正ができます。さらに、予備の話題や雑学をストックしておくことで、急な空白にも柔軟に対応できるのです。
言葉が飛ぶことは、決して失敗ではありません。それは、話すことに真剣に向き合っている証でもあります。大切なのは、その瞬間をどう受け止め、どう乗り越えるか。プロの技術は、日々の積み重ねと工夫の中にあります。
私たちも、日常の会話や発信の場面で、少しだけその技術を取り入れてみると、言葉との付き合い方が変わってくるかもしれません。

