COLUMN

コラム

ニュースアナウンサーで学んでいること
アナウンサーは緊張しないと思っている人も多いようですが恐らく私は違います。緊張とうまく付き合えず何度も悔しい思いをしてきました。だから話し方教室を開設したと言っても言い過ぎではありません。生放送は緊張をコントロールしながら過ぎ去り行く時間を後悔せず常に前進のみの気持ちで向かいます。そんな私のニュースアナウンサーで学んだ緊張との向き合い方についてです。

緊張と向き合う日々
昨日は今年最後のニュース勤務でした。生放送でニュースを読む中で大切なことは時間内に正確に読むことが求められます。それは間違えてはいけない、時間は1秒でもオーバーしてはいけない。など精神的にはかなり負担というかプレッシャーがかかることです。そのようなプレッシャーのかかる仕事を随分と長く関わっているなあと年末にしみじみと思ったわけです。またできれば緊張しないようにリラックスして臨みたい。それが身体への負担軽減になるのではないかとニュース原稿を下読みしながら(ニュースの本番の前に準備で読むこと)ふと自身を労わりだしました。ではどうしたらいいのでしょうか。それができれば苦労しないと突っ込みながらも自身が緊張をコントロールできたらいいなあと。そこでどういう時に上手くいかなかったか。どのように生放送と向かったときに分かりやすく伝えられたかを自分なりに振り返りました。当たり前なのかもしれませんがメンタルが実に大きく関わっています。

失敗から学んだ
こういう時は失敗したとき、どうして上手くいかなかったのかを分析するに限ります。数年前に周年記念式典の司会をさせていただきました。2000人の来場者。スポットライトを浴びてアナウンスをする。度胸があるというか、恐いもの知らずというか。自分が自分でないような感覚になります。本当は相当緊張していたにもかかわらず、私は緊張を隠そうと余裕なフリをしていました。しかしリハーサルはほとんどなく、事前準備も納得いくところまでできなかったため不安がふとよぎっていたのを今でも覚えています。そんな時、本番直前にクライアントの方から話しかけられたのです。「もう緊張なんてしないでしょ」と。そこでかっこつけなきゃいいのに「そんなことないですよ」と言いながら余裕のフリをしてしまった。この直後から緊張はマックスでした。そうです。自然体でいられなくなったのです。あの時、ひとりで集中すればよかった。もっと丁寧に緊張と向き合うべきだったと今でもふと思い出すと胸が痛くなります。私にとって緊張は準部不足と焦りと奢りからくるようです。
このことを胸に秘めどうやったら緊張と上手く付き合えるかを探求し続けるアナウンサー人生です。

できれば失敗したくないのだけれど
今日は年末。今年最後のニュース勤務。できれば納得したニュース読みをしたい。そのためにも敢えて生放送でニュースを読む前にもう一度上手くいかなかったことを考えました。「上手く読みたい」「間違えないように読む」などと雑念が入る。これは集中しているとは言えません。文章に集中するとは読んでいる内容や情景が目に浮かぶぐらいまで腹落ちしてきます。でも上手く読むんだと意識が散った瞬間に集中が途切れてしまうのです。今日はとにかく呼吸に意識を集中させ、ニュースの内容や情景を思い浮かべながら読みました。
毎回完璧だと思えることはありません。まだまだではありますが少なくとも緊張に邪魔されて上手く言葉が出なかったという状況は避けられます。私の場合は「準備を怠らない」「カッコつけようとしない」この2つのポイントが緊張と上手く付き合うためのポイントとなります。呼吸を整えるために瞑想や腹式呼吸など様々なことを試しています。

若い人に緊張させないように
そんな私ですが、時に若い方と話す時に緊張させてしまっているのではと思うことがあります。特に何かを依頼する場合です。「〇〇をお願いしたいのだけれど」と普通にお願いしているのだけれど後輩にとっては何やら厳しく伝えているように聞こえてしまったかしらと反省することがあります。萎縮し始めて「分かりました。でも・・」と後輩が言い淀んでいたらきっと威圧的に聞こえているのかもしれません。特に急いでいて何とか期日に間に合わせたいときなど焦っているからなおさら厳しく伝えています。ふと我に返り「こう思うのだけれど、どうかな」と言い直してまずは可能かどうか確認。できる範囲で良いからお願いしたいと頼む。若い人たちの可能性を大切に育てることも大切な役割。焦って自我を通しすぎないよう常に自戒して仕事を依頼するようにしています。

緊張と仲良しになる
結局緊張は全くなくなってしまってはパフォーマンスもメリハリがなくなってしまいますが、緊張しすぎてしまうとその人の良さが発揮できない。緊張がストッパーになってしまいます。そこでまずは、緊張を敵にするより味方につけるためには「何故緊張するのか」というあなたが緊張するときのメカニズムを分析することでしょう。私の場合はお伝えしたように「カッコつける」「準備を怠る」が緊張の正体でした。
話すことに自信がなく緊張するという人は、失敗しても誰からも攻められないしがらみのない場所で発言する。発言することに慣れることも大切です。
緊張して頭が真っ白になる人は、お守り代わりにメモを用意しておく。但し文章を完璧に書かずにポイントを絞って柱となることだけを書いておく。
緊張して早口になる人は、一呼吸おいてから話し始める。など緊張する状況を見極めて、緊張退治ではなく「緊張と仲良し」を目指してほしいと思うのです。緊張を仲間にしたらきっとあなたは”無敵“ですよ。大丈夫です。あなたの失敗を待っている人なんていません。聴衆はあなたの味方。だから楽しんで話してください。そしてできないからと諦めないでください。結構アナウンサーも平気な顔をしていますが焦ったり動揺したりのアクシデントやハプニングと向き合っているのです。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございます。今年最後のニュース勤務を終えて深夜にふと皆さんにお伝えしたいと思いコラムを書きました。

NHK文化センター前橋教室にて「心に伝わる話し方教室」主宰

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