失敗できない仕事を頼まれたら【聖火リレーとともに駆け抜けた日々】
ニューノーマルの司会を体感「心の中でエールを」
群馬県に3月下旬に「東京2020オリンピック」聖火リレーが来ました!私も両日のスタート地点の出発式と、途中のミニセレブレーションの司会として聖火リレーを盛り上げるべくお手伝いをしましたが、さすがのセキュリティでした。それはお客様へのアナウンスにも表れていました。
まず今までは声援をあげて大きな声で盛り上げたイベントも、新型コロナウィルスの影響を鑑み、声は出さずに拍手や小旗で応援するというもの。出発式で「おはようございます!」と第一声を上げると、お客様から「おはようございます!」のレスポンスコール。嬉しくなっちゃって「ご声援ありがとうございます」と肯定的な一言を入れたところ・・・すかさず天の声の如く「お客様は、声を出さずに拍手での応援です」という指令がきました。そうでした。原稿にもそのように書いてあります。
そこですかさず訂正を入れます。「ここからは声は出さずに、心の中で声援(エール)を送ってください。声援は拍手に込めてお願いいたします」と言い直し、いつぞや経験したNHKののど自慢の前説(まえせつ)のように”拍手の練習“をして楽しく盛り上げる。
前説とは、本編が始まる前に観客を暖める拍手の練習などですが、その経験が役に立ちました。とっさにアドリブで入れてみましたが結果、ただ厳重に注意するのでなく、お客様の心の炎は消さずに注意喚起をするという行動が出来たわけです。
いつも司会者はこんな感じで現場の空気を感じ取りながらも、お客様とステージに立つ皆様との間を取りまとめています。アドレナリン全快でコメントを探しつつ、この状況に合わせた一言を生み出す。これが司会の醍醐味かもしれません。
失敗しない理由は「現場の判断力」
「本番に強い」というのも失敗できない現場には大切なこと。今回でいえばセレブレーションのメーンとなる「トーチへの点火」。リハーサルはありません。その場でコメントを言わなくてはいけないのです。すぐに着火するか時間がかかるかも分かりません。ですから様子を見ながら見たものをそのまま言葉で紡いでいきました。何度もテレビやラジオで私の声が流れたので、皆さんもお聞きいただけたかもしれませんね。
また2日目の伊香保石段街では、石段街を降りてくるシーンは、どのくらいの時間がかかるか見当がつきませんから、ランナーが見えてきてからは全てアドリブで話します。
加えて絶対失敗できないことがもうひとつ。ランナーの出発時間が決まっています。そのため、全体の流れで時間を調整しながら大会組織委員会の方とアイコンタクトを取りながら進めていくのです。大会組織委員会の方は当日30分前くらいに到着するので初対面で現場合わせ。それまでは打ち合わせはナシです。2日間担当したものですから顔見知りになって最後の現場では「アナウンスの声で奈良さんと分かりましたよ」と言って頂けた。親しみを込めて言ってくれたその言葉でお役に立てて良かったと実感が湧きました。本番の強さは今まで様々な現場で、その場でコミュニケーションを取り、アクシデントやトラブルを乗り越える経験をさせてもらったから。こうして考えてみますと「現場の判断力」が、大事なところで失敗しない理由に繋がっているのかもしれません。
失敗できない現場に必要なのは「根拠のない自信」
毎回失敗できない現場に身を置いています。特に今回は国の行事であり、特別な状況の中お客様の安心安全を鑑みながらの司会です。盛り上げつつも新型コロナウィルスの関係で制限がかかる。各自治体の方や関係者の方は、去年の延期から2年かけての準備だったわけで、そんな思いを汲み取れば汲み取るほど、プレッシャーになります。
私は必ず主催者の方に「お任せください」とお伝えします。みなさん「おおお~」と言いますね。根拠はないけれど自信がある。言葉を発すると目標に向かって努力をするのかもしれません。お任せくださいの奥底には努力あるのみです。送られた原稿を読める限り何度も読み、様々なアクシデントを想像し、当日まで体調を管理して臨みます。
こうして「お任せください」という魔法の言葉で自分を奮い立たせ、聖火ランナーを見守りながら駆け抜けた2日間。司会者&アナウンサー冥利に尽きる最高の経験をさせていただきました。とにかく楽しかったです。この楽しさを次回の現場でも活かせるよう精進、練習、鍛錬を続けます。
皆様の毎日の生活の中で私の経験が少しでもヒントになれば嬉しいです。今日も最後まで読んでくださりありがとうございます。