COLUMN

コラム

毎回本番を迎える前にどのようなことをするか。それはとても地道な作業です。とにかく練習あるのみ。本番1回のためにどれだけの準備をするのだろうと思うことさえあります。でも努力しなければその先にある成功は見えてこないということは誰もが経験済みでしょう。

私は準備が好きです。インタビューであれば事前に相手の方について調べる準備。ステージに立つ場合は原稿だけでなく体調を整える。人に見られることを意識した体型を整える準備など。毎日の積み重ねが身体全体から滲み出てしまうから怖いものです。準備をしていても的外れに終わってしまうこともありますし、上手くいかないことも多い。そんな悔しい思いが「今の私」を作っているのだと思います。

これは準備とは違うかもしれませんが、ある早朝一番の仕事のこと。前日は22時まで別の現場でした。2時間近くかけて会場近くの宿泊施設に行き、前泊して早朝に備えるか。それとも朝早く出て会場に向かうかで悩んでいました。出した結論は前泊。朝、車のトラブルや渋滞があったらどうしようという不安があったからです(結構心配性)。そんな不安で朝を迎えて現場入りするより、深夜に現地の近くまで向かおうと決めたのですが。

しかし蓋を開けてみれば前夜が、なんと雨と強風による悪天候。しかも峠を越えなければいけない。対向車はゼロ、土砂崩れの工事中らしい箇所に、いくつものカーブ。いつしか横殴りの霧と雨で視界は数メートルのみ。命がけで現場に向かっているという、大げさでなく本当の恐怖が襲いかかってきました。ラジオや音楽で気を紛らわしても虚しいだけに感じてしまい。心底怖がりな自分を目の当たりにしました。

なんとか2時間10分かけて到着した宿。湯船に浸かり今日一日を振り返りました。「準備が大事と意を決してきたけれど、この判断で良かったのかしら」と。お風呂から出ても興奮状態。しかも怖さと寒さ(夏なのに)で体が震えて眠れない。YouTubeでお気に入りのリラックスヨガをやりながら、なんとか眠りにつきました。

翌朝になっても回復しない天気。しかも山の天気は変わりやすくて、結局荒天の中での式典となりました。でも、私が司会ができるように演台を拭いてくれるスタッフがいる。参加者が濡れないようにとギリギリまで椅子を拭いていたスタッフ。石段で参加者が滑らないようにと泥をぬぐっていたスタッフ。式典を成功させようという熱い思いが伝わってきます。みんな、ありがとう。と、ひとり一人に心の中でお礼をつぶやき、司会に集中。

練習では本番のように。本番は練習のようにという言葉が私を支えます。力を入れ過ぎず、程よい緊張感に保ちながら進行に集中する。

荒天の中の峠超えも日々の発声練習も、この日のための小さな積み重ね。小さな努力の積み重ねしか成功に導くための近道なんてありません。そして、努力の積み重ねなんて関係なく順調に終わり、司会者の存在さえも忘れるぐらいであれば大成功なのです。

帰り際に参加者の方が少し照れたような表情で会釈をしてくれました。これだけで十分なご褒美です。

毎年、夏になるとやってくる式典。来年も同じ気持ちで同じ立場で、会場に当たり前のように、空気のような存在としてお手伝いできたらいいなと、手を合わせます。完璧にできたと思うことなどありません。まだまだ勉強と進化中。育ってきた後輩たちには私の失敗談を教訓にしてもらい、歩みやすい道を作っていくのも私の役割。今年の夏デビューした後輩たちがいます。今日も後輩に恥じないように新しい原稿に目を通してひたすら準備と努力を続ます。

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